伊藤學賞:林川 俊郎 氏
北海道大学名誉教授
林川俊郎氏は、巨大地震動を受ける鋼斜張橋および曲線高架橋の動的非線形地震応答性状を明らかにし、耐震設計および免震設計の発展および耐震性向上への技術の進歩に多大な貢献をされました。鋼斜張橋では主塔間の水平中間部材に低降伏点鋼、損傷部材、免震デバイスによるエネルギー吸収システムを構築し、その研究成果は岩見沢市近郊の「たっぷ大橋」に活用され、その有用性が認められました。ファイバー要素を採用し、材料非線形と幾何学的非線形を考慮した複合非線形地震応答解析プログラムの開発に成功し、数多くの研究成果を挙げられました。曲線高架橋では鋼製支承、摩擦支承、免震支承などの組合せ、落橋防止システムの有効利用、FRPシートによる橋脚基部の補強対策について有益な知見を得ました。特に、北海道のような積雪寒冷地では低温時の免震支承の剛性と減哀特性が変化し、その動的非線形地震応答性状も大きく異なることを明らかにしました。これらの研究成果は、北海道土木技術会鋼道路橋研究委員会が平成24年1月に発刊した「北海道における鋼道路橋の設計および施工指針、第1編:設計・施工編、第2編:維持管理編、第3編;資料編」に反映されました。本指針は林川俊郎氏が北海道土木技術会鋼道路橋研究委員会委員長として取り纏めに尽力され、発刊後北海道開発局、北海道、市町村、東日本高速道路株式会社等の統一基準として運用され、北海道における鋼道路橋の事業発展および技術向上に多大なる貢献をしました。
また鋼床版の塑性耐荷力特性と変形性状を数値解析結果および模型実験結果より明らかにされました。開きリブに比較して閉じリブ(Uリブ)は鋼床版の塑性耐荷力を格段に向上させ、Uリブの板厚は6㎜で十分であることを解明しました。また鋼床版Uリブの規格化と普及、応力集中による疲労対策問題に従事し、その研究成果は本州四国連絡橋の因島大橋、大三島橋、大鳴門橋、明石海峡大橋等の鋼床版に採用されました。
上述のとおり、林川俊郎氏は長年にわたり、鋼橋の進歩、発展、設計、施工、維持管理において多大なる貢献をなされました。