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お知らせ

令和5年度 伊藤學賞・技術功労賞の受賞者決定

 わが国の鋼橋技術の進歩・発展に貢献・寄与された方を称える「伊藤學賞および技術功労賞」の受賞者が、以下のとおり決定しました。
 表彰式は令和5年10月13日(金)開催の当協会東京地区「橋梁技術発表会(銀座ブロッサム 中央会館 ホール)」にて行ないます。

伊藤學賞:林川 俊郎 氏

北海道大学名誉教授

 林川俊郎氏は、巨大地震動を受ける鋼斜張橋および曲線高架橋の動的非線形地震応答性状を明らかにし、耐震設計および免震設計の発展および耐震性向上への技術の進歩に多大な貢献をされました。鋼斜張橋では主塔間の水平中間部材に低降伏点鋼、損傷部材、免震デバイスによるエネルギー吸収システムを構築し、その研究成果は岩見沢市近郊の「たっぷ大橋」に活用され、その有用性が認められました。ファイバー要素を採用し、材料非線形と幾何学的非線形を考慮した複合非線形地震応答解析プログラムの開発に成功し、数多くの研究成果を挙げられました。曲線高架橋では鋼製支承、摩擦支承、免震支承などの組合せ、落橋防止システムの有効利用、FRPシートによる橋脚基部の補強対策について有益な知見を得ました。特に、北海道のような積雪寒冷地では低温時の免震支承の剛性と減哀特性が変化し、その動的非線形地震応答性状も大きく異なることを明らかにしました。これらの研究成果は、北海道土木技術会鋼道路橋研究委員会が平成24年1月に発刊した「北海道における鋼道路橋の設計および施工指針、第1編:設計・施工編、第2編:維持管理編、第3編;資料編」に反映されました。本指針は林川俊郎氏が北海道土木技術会鋼道路橋研究委員会委員長として取り纏めに尽力され、発刊後北海道開発局、北海道、市町村、東日本高速道路株式会社等の統一基準として運用され、北海道における鋼道路橋の事業発展および技術向上に多大なる貢献をしました。
 また鋼床版の塑性耐荷力特性と変形性状を数値解析結果および模型実験結果より明らかにされました。開きリブに比較して閉じリブ(Uリブ)は鋼床版の塑性耐荷力を格段に向上させ、Uリブの板厚は6㎜で十分であることを解明しました。また鋼床版Uリブの規格化と普及、応力集中による疲労対策問題に従事し、その研究成果は本州四国連絡橋の因島大橋、大三島橋、大鳴門橋、明石海峡大橋等の鋼床版に採用されました。
 上述のとおり、林川俊郎氏は長年にわたり、鋼橋の進歩、発展、設計、施工、維持管理において多大なる貢献をなされました。

林川俊郎氏

技術功労賞:坂井田 実 氏

大日コンサルタント株式会社 コンサルタント事業部 橋梁構造部 専任参事

 坂井田実氏は、鋼橋の健全性を確保して人々が安全にこれを利用できるために、鋼橋メーカーで培った技術を活かしコンサルタント技術者として、長年にわたり地域に貢献してきました。
 早くから橋梁長寿命化に取り組み、水仕舞の重要性や部分塗装の活用、桁端腐食に配慮した排水型伸縮装置の適用、橋梁への管理用RFIDの設置など有用な提案を行ってきました。既設無塗装耐候性鋼橋については、内陸部にある多くの橋梁が健全に活用され防錆更新費の節減効果が得られていることを示し、既設の保護性さび生成面に対するHTB接合面素地調整方法の得失を明らかにしました。
 2002年からは建設コンサルタント技術者として、岐阜県内の自治体や企業の建設従事者向け講習会の講師を務めたほか、2008年からの岐阜大学社会基盤メンテナンスエキスパート養成講座では橋梁上部工の設計、橋梁設計の歴史、橋梁点検実習等の講師を担当し、2014年からの名古屋大学橋梁保全技術者養成講座では、鋼橋の劣化予測・評価判定の講師を担当し、現在も継続して鋼橋の点検・診断技術者の育成に尽力しておられます。
 地方では、国の点検要領による判定のみでは効果的な既設橋梁の保全は不充分であり、地方公共団体レベルの事情に合わせた点検要領や保全方針の策定が必要となります。岐阜県が設けた「岐阜県鋼橋梁補修検討委員会(’07~’09)」や「岐阜県橋梁修繕検討委員会(’09~’13)」,「岐阜県道路施設維持管理に関する検討会(’13~)」の委員として鋼橋特有の保全技術の伝承に努め、また各土木事務所で道路維持担当職員が橋梁の損傷状況と補修方針を共有するために行っている「判定会」における貴重なアドバイザーとして、有効な補修工事の実施に貢献しています。岐阜県内橋梁の委託業務を通じて、点検マニュアルの整備、劣化状況の評価、効果的な補修の実施に向けて積極的に多くの提言を行い、全国でもトップクラスの橋梁の健全性確保に寄与されています。トラス橋斜材の破断や桁下火災、橋脚傾斜による橋体変形などの事故が発生しており、これらに対して安全に補修・補強・復旧ができるように設けられた検討委員会の委員も歴任されています。
 上述のとおり、坂井田実氏はわが国の鋼橋技術の進歩・発展に寄与するとともに、鋼橋を通じて社会に貢献した技術者として極めて高く評価されました。

坂井田実氏

【問合せ先】

一般社団法人日本橋梁建設協会 事務局

TEL.03-3507-5225 FAX.03-3507-5235