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お知らせ

令和6年度 伊藤學賞・技術功労賞の受賞者決定

 わが国の鋼橋技術の進歩・発展に貢献・寄与された方を称える「伊藤學賞および技術功労賞」の受賞者が、以下のとおり決定しました。
 表彰式は令和6年10月4日(金)開催の当協会東京地区「橋梁技術発表会(銀座ブロッサム 中央会館 ホール)」にて行ないます。

伊藤學賞:野上 邦栄 氏

東京都立大学 客員教授

 野上邦栄氏は、東京都立大学において一貫して鋼橋の性能設計、耐荷性能評価技術および維持管理に関する研究に従事され、その発展に大きく貢献された。鋼橋および構造部材の座屈・耐荷力に関する研究では、鋼桁橋の最適桁高の算出方法の提案、2主桁橋の構造特性による座屈崩壊区分の解明、有効座屈長の算出法に関する問題点とその対応策、箱断面圧縮部材の複数耐荷力曲線の提案など耐荷性能評価技術の発展に貢献されました。さらに、日本道路協会鋼橋小委員会委員として道路橋示方書の性能照査型設計法への改訂に尽力されたほか、多くの学協会で委員会委員長や委員として、鋼橋の設計・維持管理の検討、設計基準改訂などに貢献されました。
特に、吊形式橋梁の開発研究では、吊形式橋梁(吊橋、斜張橋)鋼製主塔の座屈・耐荷力特性について解析的に検討し、合理的な座屈設計法を提案し、この業績により土木学会田中賞(論文部門)を受賞されました。これらは、本州四国連絡橋鋼上部構造委員会委員として尽力した吊橋主塔設計要領の改訂にも活かされました。また、吊形式橋梁の設計の合理化・長大化を推進するため、吊形式橋梁全体系の終局強度に着目した各構成部材の安全率の組合わせを提案し、合理化設計への可能性を示されました。さらに、新構造形式として低塔斜張橋および多径間超長大吊橋を考案し、それらの実現可能性を示されました。前者の業績により土木学会田中賞(論文部門)を受賞されました。さらに、本州四国連絡橋公団海峡横断道路ケーブル安全率検討小委員会委員として、海峡横断道路ケーブル設計指針(案)の作成にも尽力されました。
維持管理に関する研究では、独自に開発した大規模かつ精緻な3D表面計測装置を用いて、19.5年海洋暴露試験体の板厚減少量、腐食速度等の腐食形態を解明されました。また、腐食形態の異なる種々の柱および梁部材に対して実験的・解析的検討を行い、最大断面欠損率を用いた残存耐荷力式を提示されました。さらに、土木研究所・早稲田大学との共同研究では、腐食劣化の生じた鋼トラス橋格点部、弦材および斜材の圧縮部材に対してそれらの残存耐荷力特性について実験的・解析的検討によって残存耐荷性能評価法を提案し、維持管理実務の健全度評価への活用に寄与されました。
上述のとおり、野上邦栄氏は、長年にわたり鋼橋技術の進歩・発展に多大なる貢献をなされました。

野上 邦栄 氏

技術功労賞:瀬田 真 氏

和合建設コンサルタント株式会社 部長

 瀬田真氏は、鋼橋における保全の重要性が広く認識される前から、日本橋梁建設協会保全委員会委員として保全の重要性を説き、鋼橋保全における技術レベルの底上げのため精力的に活動されてきました。おもな功労として以下のようなものがあげられます。
保全工事における各種手引きの執筆・発刊など保全工事の技術的な底上げに大いに貢献されました。 東日本大震災後の日本橋梁建設協会が行った3,000を超える橋梁調査結果の報告書執筆・発刊作業を保全委員会副幹事長として陣頭指揮を執りました。調査報告書から得られた知見はその後の鋼橋の耐震性向上に繋がるものであり、大変意義のあるものであります。
鋼橋の保全工事における不調不落が多発する事象を踏まえ、増え続ける鋼橋の保全事業を効率的に進めていくべきとの考えから、「保全工事 難易度区分表」を作成しました。その区分表は、国土交通省四国地整の「保全工事発注の留意事項」にも採用されるなど、鋼橋の保全事業の円滑な推進に寄与しています。
日本橋梁建設協会と国土技術政策総合研究所との加熱矯正に関する共同研究では、WG長として陣頭指揮を執り、特に青熱脆性領域における加工の危険性など、それまで留意せずに施工されていた事象を明確に禁止し、鋼橋の加熱矯正における品質の向上に寄与されました。
土木学会鋼構造委員会鋼橋の支持機能検討小委員会に参画し、主に支承まわりの耐震性向上、維持管理性向上の検討に尽力されました。
上述のとおり、瀬田真氏は、日本橋梁建設協会保全委員会の礎を築いたと言っても過言でなく、わが国の鋼橋技術の進歩・発展に寄与するとともに鋼橋を通じて社会に貢献されました。

瀬田 真 氏

技術功労賞:山田 博文 氏

ヤマダインフラテクノス株式会社 代表取締役

 山田博文氏は、会社代表として2005年の「鋼道路橋塗装・防食便覧」の改定でRc-Ⅰ塗装系が導入されたことを機に鋼橋の塗装に本格参入し、それまで原子力発電所の原子炉格納容器の塗替え塗装で培ってきた産業廃棄物を最小限に抑える技術を応用することで「循環式ブラスト工法」を開発されました。これは、従来、工場でのみ使用されてきた金属系研削材を現場のブラストに取り込んで、産業廃棄物と粉じんの大量発生を最小限に抑える工法であります。さらにこの技術を日本中に普及させるために敢えて特許を取得せず、一般社団法人を立ち上げて普及に努められました。この技術は、鋼橋長寿命化を推進していくうえで大きな壁となっていた従来ブラストによる産業廃棄物の大量発生という課題を克服し、環境負荷低減に大きな成果をもたらすものであります。
さらに同氏は、腐食と並ぶ鋼橋の代表的な損傷である「疲労き裂」の予防保全を行うため、岐阜大学、東洋精鋼㈱と共同して、今まで実際の橋では施工不可能とされてきたショットピーニングを、学術的な効果の立証や様々な形状の橋にも対応可能な管理基準の確立とともに、実現しました。「循環式ショットピーニング工法」は、循環式ブラスト工法の循環再利用システムがピーニング用ショットにも応用できることに着目し、塗替塗装工程に組み込むことで実現した工法であります。 「循環式ブラスト工法」と「循環式ショットピーニング工法」を用いることで、鋼橋の2大損傷である腐食と疲労き裂を同時に予防できることになり、まさに鋼橋長寿命化の救世主ともいえる工法であります。
上述のとおり、山田博文氏は、わが国の鋼橋技術の進歩・発展に寄与するとともに鋼橋を通じて社会に貢献されました。

山田 博文 氏

【問合せ先】

一般社団法人日本橋梁建設協会 事務局

TEL.03-3507-5225 FAX.03-3507-5235