長年にわたり、鋼橋に関連する業務に従事し、わが国の鋼橋技術の進歩および鋼橋業界の発展に貢献した方を表彰する『伊藤 學 賞』(平成21年度)を平成21年5月より橋建協ホームページ等で公募しておりましたが、(社)日本橋梁建設協会表彰委員会にて審議を行った結果、今年度の受賞者は阿部英彦様(元日本国有鉄道 構造物設計事務所 所長)に決定いたしました。10月9日に「銀座ブロッサム中央会館」で開催された「平成21年度橋梁技術発表会」の「伊藤 學賞表彰式」において縣副会長より表彰されました。受賞者の略歴および業績を紹介いたします。
伊藤學賞を受賞した阿部英彦様 |
伊藤 學賞 授賞式 |
略歴
・受賞者 : 阿部 英彦 様
・職 歴 : 元日本国有鉄道 構造物設計事務所 所長
・略 歴 :
1954.3 東京大学 工学部 土木工学科 卒業
1954.4 日本国有鉄道 入社
1961.9 イリノイ大学大学院修士課程修了
1971.1 日本国有鉄道 構造物設計事務所 次長
1974.12 東京大学より工学博士を授与
1982.8 日本国有鉄道 構造物設計事務所 所長
1984.5 宇都宮大学工学部土木工学科教授
1993.4 足利工業大学土木工学科教授
2001.4 〜 2004.12 (株)東京鐵骨橋梁 技術顧問
現在に至る
業績
○鋼橋技術の進歩への貢献
・日本国有鉄道で一貫して鋼橋技術の発展に専念されてきた。
・鉄道橋のリベット構造から溶接構造への転換、合成桁、高張力鋼などの導入のための技術基準の整備、実用化への技術開発、研究開発設計の合理化に大きな足跡を残した。
・特に、東海道新幹線の鉄道騒音対策の研究開発に精力的に取り組み、その研究成果は100余橋に適用され、その後の標準的防音構造となっている。
・また、鋼構造の疲労問題に造詣が深く、合成桁を中心にした研究には土木学会から田中賞を授与され、後に連続合成桁用の柔型ジベルが開発、実用化された。
〇鋼橋事業発展への貢献
・日本国有鉄道入社当時の鋼橋はリベット構造が主流で、溶接構造や合成桁は導入され始めた頃であった。一般構造用鋼材の炭素当量は高く、溶接には高い技術が求められたが、東海道新幹線では溶接構造を大幅に採用し、道路橋にも溶接橋の流れを拡大した。
・新しい構造の設計基準の原案作成を指導し、技術の確立、普及に大きな貢献を果たした。
・新幹線仕様の瀬戸大橋、景観を重視した上路トラス−中央本線新桂川橋梁、塗装しない鉄道橋−第三大川橋梁、新しい高耐候性鋼材を利用した新幹線橋梁−北陸新幹線・北陸道架道橋、ザイールのマタディ橋 等
〇各種委員会活動
・日本鋼構造協会、土木学会、日本道路協会、溶接学会、騒音振動学会の学協会活動
・海外事業への協力(ザイールのマタディ橋の建設、首都キンシャサの都市内交通改善、インドネシアの首都ジャカルタ近辺の鉄道職員訓練センターの設立と運営等
〇その他活動
・教育:宇都宮大学、足利工業大学での教育、研究活動を通じて若手技術者の育成
・著作:語り継ぐ鉄橋の技術―鋼橋の維持管理と環境保全 他著書多数
|